「海や森に散骨をしたいけれど、自分たちで勝手にやってもいいの?」「自分の欲しい墓地がないから作っちゃおう」と思ったことのある方々へ、分かり辛い法律を分かり易く解説しています。
墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)
第1章 総則
【第1条】
この法律は、墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。
【第2条】
❶この法律で「埋葬」とは、死体(妊娠四箇月以上の死胎を含む。以下同じ。)を土中に葬ることをいう。
❷この法律で「火葬」とは、死体を葬るために、これを焼くことをいう。
❸この法律で「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。
❹この法律で「墳墓」とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう。
❺この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可をうけた区域をいう。
❻この法律で「納骨堂」とは、他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう。
❼この法律で「火葬場」とは、火葬を行うために、火葬場として都道府県知事の許可をうけた施設をいう。
「埋葬」「火葬」「改葬」「墳墓」「墓地」「納骨堂」「火葬場」などの言葉の定義がされています。
第2章 埋葬、火葬及び改葬
【第3条 】
埋葬又は火葬は、他の法令に別段の定があるものを除く外、死亡又は死産後24時間を経過した後でなければ、これを行つてはならない。但し、妊娠七箇月に満たない死産のときは、この限りでない。
死亡又は死産後24時間を経過した後でなければ埋葬や火葬はできないと規定されているのは、死体が万が一蘇生することがあってはならないための規定です。ただし、7カ月未満の胎児や、感染症の蔓延防止など場合はこの限りではありません。
【第4条】
❶埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
❷火葬は、火葬場以外の施設でこれを行つてはならない。
ご家族が亡くなって、故人や遺族が「ご遺骨を自宅に埋めたい」と希望したとしても、それが法律的に認められることはありません。
ご家族が亡くなって、故人や遺族が「ご遺骨を海や山に撒きたい」と希望した場合はいかがでしょうか?実は、墓埋法は「死体の埋葬」「焼骨の埋蔵あるいは収蔵」についてのみ規定する法律なので、散骨については規定がないというのが実情です。したがって、散骨が合法か違法かの線引きはグレーゾーンというのが現状です。地方自治体が行う自治事務であることから、条例で規定されている地域もあります。
散骨を行う場合、法律に接触する可能性がある法律は2つあります。
❶刑法第190条の「遺体遺棄罪」の解釈
散骨の法律・条例刑法190条「遺体遺棄罪」に関しては、平成三年に東京の市民団体が行った神奈川県沖での散骨について、法務省は刑法190条の規定は社会風俗としての宗教的感情を保護 するのが目的であり、 葬送の為の祭祀のひとつとして相当の節度をもって行われる限り遺骨遺棄罪にはあたらない、との見解を示しております。
❷墓地埋葬法第4条「墓地以外の埋葬の禁止」の解釈
墓地埋葬法4条に関して、当時の厚生省は墓地埋葬法はもともと土葬を対象としていて遺灰を海や山に撒く散骨は想定しておらず対象外で、散骨を禁じた規定ではないとの見解を示しています。以降、散骨は法律に反するものではなく死者を弔う祭祀として、国民感情に配慮しつつ相当の節度をもって散骨を行うならば違法ではないと言う法解釈が定着しています。
【相当の節度とは?】
❶遺骨を骨とは解らない程度に粉末化すること
❷民家のある海岸線、海水浴場、船舶の航路では散骨しない
❸公共の場所(山、海、川、公園等)では散骨しない
❹散骨する場所の環境問題に配慮すること
❺土地所有者、農産物の風評被害に配慮すること
【第5条】
❶埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。
❷前項の許可は、埋葬及び火葬に係るものにあつては死亡若しくは死産の届出を受理し、死亡の報告若しくは死産の通知を受け、又は船舶の船長から死亡若しくは死産に関する航海日誌の謄本の送付を受けた市町村長が、改葬に係るものにあつては死体又は焼骨の現に存する地の市町村長が行なうものとする。
埋葬や火葬、改葬は市町村長の許可を受けなければなりません。
【第6条及び第7条】
削除
【第8条】
市町村長が、第5条の規定により、埋葬、改葬又は火葬の許可を与えるときは、埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を交付しなければならない。
埋葬や火葬、改葬は市町村長の許可が必要で、その許可においては「埋葬許可証」「改葬許可証」「火葬許可証」が交付されます。
【第9条】
❶死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。
❷前項の規定により埋葬又は火葬を行つたときは、その費用に関しては、行旅病人及び行旅死亡人取扱法(明治32年法律第93号)の規定を準用する。
❶埋葬や火葬、改葬は市町村長の許可が必要で、その許可においては「埋葬許可証」「改葬許可証」「火葬許可証」が交付されます。
❷「行旅病人及び行旅死亡人取扱法」について
行旅病人とは、歩行にたえない行旅中の病人で,療養の方法をもたず,かつ救護者のいない者をいい,行旅死亡人とは,行旅中死亡して引き取る者のない者をいいます。それらの者があった所在地の市町村長に応急の救護または死体の埋葬,火葬の義務を負わせ,その費用の弁償方法を定めた法律です。
第3章 墓地、納骨堂及び火葬場
【第10条】
❶墓地、納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。
❷前項の規定により設けた墓地の区域又は納骨堂若しくは火葬場の施設を変更し、又は墓地、納骨堂若しくは火葬場を廃止しようとする者も、同様とする。
墓地経営は認可事業であり、墓埋法が自由な新規参入を制限していることで、お寺を含めた墓地経営に関わる人たちの権利が維持されています。しかも、墓地経営で得た収入は非課税、固定資産税も基本的にはかかりません。
【第11条】
❶都市計画事業として施行する墓地又は火葬場の新設、変更又は廃止については、都市計画法(昭和43年法律第100号)第59条 の認可又は承認をもつて、前条の許可があつたものとみなす。
❷土地区画整理法 (昭和29年法律第119号)の規定による土地区画整理事業又は大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和50年法律第67号)の規定による住宅街区整備事業の施行により、墓地の新設、変更又は廃止を行う場合は、前項の規定に該当する場合を除き、事業計画の認可をもつて、前条の許可があつたものとみなす。
【第12条】
墓地、納骨堂又は火葬場の経営者は、管理者を置き、管理者の本籍、住所及び氏名を、墓地、納骨堂又は火葬場所在地の市町村長に届け出なければならない。
【第13条】
墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない。
【第14条】
❶墓地の管理者は、第八条の規定による埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を受理した後でなければ、埋葬又は焼骨の埋蔵をさせてはならない。
❷納骨堂の管理者は、第八条の規定による火葬許可証又は改葬許可証を受理した後でなければ、焼骨を収蔵してはならない。
❸火葬場の管理者は、第八条の規定による火葬許可証又は改葬許可証を受理した後でなければ、火葬を行つてはならない。
墓地の管理者、納骨堂管理者、火葬場の管理者のいずれも、改葬許可証または火葬許可証を受理しなければ何もできないということです。
【第15】
❶墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、省令の定めるところにより、図面、帳簿又は書類等を備えなければならない。
❷前項の管理者は、墓地使用者、焼骨収蔵委託者、火葬を求めた者その他死者に関係ある者の請求があつたときは、前項に規定する図面、帳簿又は書類等の閲覧を拒んではならない。
墓地使用者、焼骨収蔵委託者、火葬を求めた人は、それらの施設管理者に対して、省令で定められた図面、帳簿または書類等の開示請求ができます。
【第16条】
❶墓地又は納骨堂の管理者は、埋葬許可証、火葬許可証又は改葬許可証を受理した日から、5箇年間これを保存しなければならない
❷火葬場の管理者が火葬を行つたときは、火葬許可証に、省令の定める事項を記入し、火葬を求めた者に返さなければならない。
【第17条】
墓地又は火葬場の管理者は、毎月5日までに、その前月中の埋葬又は火葬の状況を、墓地又は火葬場所在地の市町村長に報告しなければならない。
【第18条】
❶都道府県知事は、必要があると認めるときは、当該職員に、火葬場に立ち入り、その施設、帳簿、書類その他の物件を検査させ、又は墓地、納骨堂若しくは火葬場の管理者から必要な報告を求めることができる。
❷当該吏員が前項の規定により立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、且つ関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
【第19条】
都道府県知事は、公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要があると認めるときは、墓地、納骨堂若しくは火葬場の施設の整備改善、又はその全部若しくは一部の使用の制限若しくは禁止を命じ、又は第十条の規定による許可を取り消すことができる。
都道府県知事は、墓墓、納骨堂、火葬場の施設の改善、使用制限、使用禁止を命じることができます。また、許可そのものを取り消すことができるという意味において、強い権限を持っていることが分かります。
第3章の2 雑則
【第19条の2】
第18条及び前条(第10条の規定による許可を取り消す場合を除く。)中「都道府県知事」とあるのは、地域保健法 (昭和22年法律第101号)第5条第1項の規定に基づく政令で定める市又は特別区にあつては、「市長」又は「区長」と読み替えるものとする。
【第19条の3】
前条に規定するもののほか、この法律中都道府県知事の権限に属するものとされている事務で政令で定めるものは、地方自治法 (昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)及び同法第252条の22第1項の中核市(以下「中核市」という。)においては、政令の定めるところにより、指定都市又は中核市(以下「指定都市等」という。)の長が行うものとする。この場合においては、この法律中都道府県知事に関する規定は、指定都市等の長に関する規定として指定都市等の長に適用があるものとする。
第4章 罰則
【第20条】
左の各号の一に該当する者は、これを6箇月以下の懲役又は5千円以下の罰金に処する。
一 第10条の規定に違反した者
二 第19条に規定する命令に違反した者
【第21条】
左の各号の一に該当する者は、これを千円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
一 第3条、第4条、第5条第1項又は第12条から第17条までの規定に違反した者
二 第18条の規定による当該職員の立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者、又は同条の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者
【第22条】
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前2条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
附則
【第23条】
この法律は、昭和23年6月1日から、これを施行する。
【第24条】
日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律(昭和22年法律第72号)第1条の4により法律に改められた左の命令は、これを廃止する。
墓地及埋葬取締規則(明治17年太政官布達第25号)
墓地及埋葬取締規則に違背する者処分方(明治17年太政官達第82号)
埋火葬の認許等に関する件(昭和22年厚生省令第9号)
【第25条】
この法律施行前になした違反行為の処罰については、なお従前の例による。
【第26条】
この法律施行の際現に従前の命令の規定により都道府県知事の許可をうけて墓地、納骨堂又は火葬場を経営している者は、この法律の規定により、それぞれ、その許可をうけたものとみなす。
【第27条】
従前の命令の規定により納骨堂の経営について都道府県知事の許可を必要としなかつた地域において、この法律施行の際現に納骨堂を経営している者で、この法律施行後も引き続き納骨堂を経営しようとするものは、この法律施行後3箇月以内に第10条の規定により都道府県知事に許可の申請をしなければならない。その申請に対して許否の処分があるまでは、同条の規定による許可を受けたものとみなす。
【第28条】
この法律施行の際現に従前の命令の規定に基いて市町村長より受けた埋葬、改葬若しくは火葬の認許又はこれらの認許証は、それぞれ、この法律の規定によつて受けた許可又は許可証とみなす。